短歌

モノクロの花束抱きて道を往く少女らの物言わぬ正しさ

故郷の懐かしさ 叫ぶ花束 蝉時雨は海に降る雪

憐憫も慕情にかわり水芭蕉 誰彼知らぬ湖沼に萎える

春の犬 ひかりにふくらんでいるみたいだ 膚をぷちんと割る注射針

飲み込んだ別れが二月 ザトウクジラが食べて結論海を泳いでいる

脆弱な青 晩夏いつだってとりとめもなくて日記に書けない

呼応してまた遠くてさみしい 驟雨張り詰めて京都さよなら

勝ち負けとかじゃないけど見紛うのがうだけを特に言った 可惜夜

系だった春 時雨立つ悲しさに 故郷のライオンが綻んでいくね

系だった春 春だったさみしさ 君の悲しみをいくらで売ろう

微笑みは劣情・点滅 終わりがないなら産まないで恋

時たちが投げられていくターミナル 君とはじめてのお別れをした

焼き付いた我らほころんでいくように消えないのに死んでいくまま

どうせなら私の前で死んでとも言えたのにね 水だ垂れてる

「意外と君のが大きいかもね心臓」「何言ってるんですか」「最高」

きみだけ先に口が動いて その先はだめ 冬だから澄んでいる 碧夏

うれしさって弱さだ 僕だけ水色のパンケーキ 昼休みにも食べている

誰だって無理して生きているんだよ 冬の森ビル5センチ高い

母親の言うかみさまはやさしくて雪を降らせるスーパースター