煮え湯は煮て飲め

「生きていたってしょうがない、私は30年間生きてきたけど彼氏だって居ないし、職場に友達もほとんどいない。休みの日には家でずーっと天井を見てるだけ!絶望しかない!」

「それって本当に天井を見てるだけなんですか?」

「えーっと、トイレに行ったりテレビを観たり、しいたけ占い見たりはしますけど」

「占い見てんじゃん、希望寄りの行為だ」

「あとなんかクックパッドでレシピ探したりも」

「おっ、最近何作ったんですか?」

「『煮え湯 飲み方』で検索したら白湯がヒットしたんで、煮ました」

「水を、ですね。自明だから言わなかったんだ。煮え湯、飲まされる以外の飲み方もあるんですね」

「ちょっとだけ悔しい気持ちになりました」

「煮え湯を飲みにいった人生を悔いているのかな」

「レシピ動画、何を検索してもリュウジに辿り着いてしまうからもうYouTube観れないんです」

「寡占してる感じありますよね、YouTubeは観ていいと思いますけど」

リュウジ、いつまでお兄さんって名乗るんだろうって思ったら怖くて」

「コメント欄次第じゃないですか?」

「『キツいだろ』『若さに縋るな』『もうお前のことを10年観てんだ』」

「優しさゆえの鞭みたいなのが最後」

「チャンネル名が『料理 リュウジ』になったら私も観ようと思います」

「背負ってますね、料理を。 にしてもこの部屋暑くないですか?」

「生きてたってしょうがないので、徐々に火葬されたいと思って暖房つけてるんです」

「低温調理器で焼肉できると思ってるのかな」

「ちょっと、微妙に角度ついたツッコミやめてください。どこまでそういうの言えるのか段々ボケをシンプルにしていきますよ」

「あっすみません、イヤです。今回の返答も角度つけたかったんですけど、なんかやりにくい言葉で返されましたね」

「全部夏のせいってことにしませんか」

「JRのキャッチコピーの夏バージョンかクリープハイプの二択だ」

「生足魅惑のマーメイドってことは上が魚ってことですよね」

「ダメですよ、イラスト付きのネタツイで散々言われていることを自分の発想かのように言うの」

「いいんですよ、見る層が違うんだから」

「第四の壁を認識してそうなこと言わないでください」

「ツッコミ側の人ってコミュニケーションやりやすそうですよね、受け身でいられるから」

「複数人の会話ってボケる人とツッコむ人と、笑ってる人の最低3人が居れば成り立つらしいですよ」

「アイドルのラジオ番組は?」

「あれはボケるアイドルと笑ってる放送作家とツッコむファンっていう構造です」

「アイドルが笑ってるだけのラジオもありますよね」

「笑ってるだけで場が持つんだから充分な魅力ですよ、あっお湯沸かしてるじゃないですか。暖房のみならずお湯まで沸かして、どんだけ熱死したいんだあんたは」

「あれは煮え湯です、こないだ買った吠え面と一緒に是非」

「かかせるってなんか官能小説みたいですよね」

「マスだったら言わんとしていることはわかりますが」