徒然

高邁な精神はいつか全てを薙ぎ倒しながら、世の中を歩んでいく。しかしそれは高邁であるがために、いつかが来ないことを待っていられずに考えを変える。価値観は転換し、自らを喪う。自分というものの絶対性を見失う。歩みは時として止まり、走ることもあったが次第にそれも少なくなり、そして永遠に止まる。少年だった肉体は、精神は、衰えに向き合う頃にはもう既に、立ち行かないまでに衰えている。そして彼の人生を振り返らざるを得ない。前を向くことが出来ないからだ。そうして振り返ると、その歩みの愚昧に驚く。悲しくは思わない、思う機能すら失ってしまっている。彼は人生をやり直したいと思うだろうか、自らの手中に納まっていた世界は、いつから外側であっただろうか。人間はその狭量さを引き受け始めたときから大人になる。絶対が存在しないことを引き受け始めた時から衰え始める。川の流れに流されるそのただ中で生活を始める。牽引してくれる第三者はいない。いつかもやってこない。己の目の輝きを他の誰かと違うことを見出してくれるような牽引者には出会えない。悲しさは感じない。悲しさを感じているうちは高邁な精神は衰えていないのだと思う。